市場原理主義の大嘘

 『国家の品格』を引き合いに出しているついでに、小泉やその片棒を担いでいる竹中の言う市場原理主義の嘘を暴いておかねばならない。市場原理主義とは、各自が利己的に利潤を追求していれば、「神の見えざる手」に導かれ、社会は全体として調和し豊かになる、と言うものである。要するに自由競争放任主義。

 この論理の決定的な問題点は、自由競争というと一見平等、だれにでもチャンスが与えられているように見えるが、そうではない所にある。また、この考え方の根底にあるのは、金儲け至上主義を煽っていることである。

 第1点目の不平等性について。
 現在、米国では敗者・勝者が明確になり、敗者は毎日の生活にも困窮するようになっている。米国では、何か災害があると直ぐに暴動が起こる。どこを襲っているのかといえば、食料品店の食べ物を略奪している。日本では考えられない現象である。あの暴動を起こしている人間達は、その日の食事にも困っているのであろう。そんな人間達に自由競争と言っても彼等は最初から競争に参加する資格なんかないのと同じでは無いか。要するに至上原理主義とは現在の勝者をより完璧な勝者にし、現在の敗者を徹底的に打ち負かす、犬猫と同じ境遇にまで貶める思想である。
 既に学歴と親の年収は明確な相関が認められている。東大に行くには、親の年収が多いほうが有利であるし、貧乏人が東京に子供を下宿させること自体が困難である。昔、吉田茂だったかが、「貧乏人は麦飯を食っていろ」と言ったと思うが、現在は「貧乏人に学歴は必要ない」と言っているのと同じ経済状況になった。
 1月3日付け朝日新聞1面に「就学援助受給4年で4割増 山口県は5人に1人」の記事を見て驚いた。既に事体はここまで進行していると。要するに小中学校の文房具代や給食費、修学旅行費が払えない家庭が激増しているのである。苅谷剛彦・東大教授の話が載っていた。「塾に1ヶ月に何万円もかける家庭がある一方で、学用品や給食費の補助を受ける子どもがこれだけ増えているのは驚きだ。教育環境が、義務教育段階でこんなに差があって、次世代の社会は、どうなってしまうのか。・・・・・・機会の均等もなし崩しになっては、公正な競争社会とは呼べない。」
 そう、不平等と書いたが、公正ではないのである。

 第2に金儲け至上主義の問題。
 良く会社における日本の新入社員と社長の年収の差が、数十倍程度なのを指摘して、おかしいと言う。米国では百から数千倍かもしれない。しかし、日本の数十倍の何がおかしいのか。物事の判断基準を失った日本人は、欧米と比較されると直ぐにおかしいのかな?と考えるみたいだが、何がおかしいのか。社長が一般社員と同じ食堂で昼飯食って何が悪い。完全に食堂まで幹部用と社員用で分ける方がおかしいだろう。
 単純に給料と責任の重さや実行していることの重要性を考えたら社長は新入社員の千倍万倍貰うのは当然だよ。しかし、それを言い始めたら課長は新入社員の10倍、部長は新入社員の100倍位は重要な仕事してるだろう。そんなことは実行できないだろう。全てを金で考えるからそんなことになる。
 人生順繰りの面があるし、人の上に立てたと言う名もあるだろう。大体、考えてもみろ。現場の労働者がいなければ、社長だけいても、何も出来ないんだから。持ちつ持たれつ、ではないか。そう考えると社長だけが何でそんなに給料貰うんだとなる。人間、どこに考え方の視点を置くかだ。
 正月にテレビで堀江貴文が心臓が10個あると良いな、と言っていた。臓器再生技術を使って、既に商売の事を考えているらしいが、その前に人の命の問題とか、生命技術を人間がどこまで扱って良いのかとか、考えるべき事があるだろう。頭の中は金の事だけなのか、こいつらは。

 第3に環境問題。
 自由競争でこれほど深刻になった環境問題をどう克服するのか。環境問題は21世紀の世界的な問題である。特に地球温暖化の問題。最大の二酸化炭素排出国である米国は京都議定書にも参加しない無責任大国なのである。金を稼げば、何をやっても良いと考えているのであろう。この辺がヨーロッパと米国の違いなのかな。
 私も結構、欧米と言ういい加減な表現をしているが、欧と米では政治的な考え方など正反対なところがあり、日本は欧にはまだ学ぶべき点が多いと考えている。

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